逆走式・静岡ロケ報告(2) 一碧湖


<一碧湖畔を歩く百合子と芳子>

クランクアップした10月22日は、なんと朝6時半から宿舎近くの函南町の倉庫でポスター撮りを行い、その後、一碧湖まで足を伸ばして百合子と芳子のシーンを撮り、それから前回報告した熱海の石畳の坂道に向かうという、何とも慌ただしいスケジュールだった。
ポスターのデザイン・制作は「支援する会・静岡」が担当してくれるのだが、プロデューサーの石垣詩野さんとデザイナーの利根川初美さんは静岡市から、カメラマンの小川博彦さんに至っては静岡県西部の掛川市から来てくれるのに、東部の熱海に近い函南町、午前6時半を指定する撮影隊の非情!
もちろん、撮影される一十三十一さんと菜葉菜さん、それにヘアメイクと衣装のチームは5時起きで準備する。映画のロケは、やはり非日常的なものだと痛感せざるを得ない。
小川さんはパソコンを持ち込み、利根川さんのデザインにしたがって撮影しながら、パソコン画面で確認して行くので、想定していたより進行は早かった。その一方で、浜野監督をはじめとする撮影本隊は一碧湖に向かい、ロケーションを確認する一方で、実景の撮影などを行っていた。


<湖畔に佇む二人。実は猪苗代湖を想定したシーンなのだ>

百合子の祖母が住み、百合子が処女作の「貧しき人々の群れ」をはじめとする小説を書いた福島県安積の開成山は、猪苗代湖から安積疎水によって水を引いた開拓地だ。実際に百合子と芳子の二人も、猪苗代湖まで遠出している。静岡ロケがアップした後、撮影部を中心とする実景班は広大な猪苗代湖の周囲を廻って、3日間撮影した。
その実景につながるのが、この一碧湖のシーン。伊東市に入るこの湖まで、スケジュール的に撮影に行けるかどうか危ぶまれたが、最終日に実現した。大正時代が舞台のこの映画で、戦後の人工物が見えては困るのだが、奥の方に静謐な一帯があった。
なお、上の写真の対岸に見える緑のなか、右手の方に小さな穴が開いているのがお分かりだろうか。
実は対岸の向こうにも湖面が広がっていて、下の写真のように、穴の向こうに赤い鳥居が見える仕掛けになっている。
もちろん映画の画面上は登場しないが、何か有り難い意味があるのだろう。