会計からの報告 〜 支援者からのメッセージ 〜

先週、制作支援に大きなお力添えを下さった方から、メッセージが届きました。
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「百合子、ダスヴィダーニヤ」の映画に寄せて

 浜野さんがついに「百合子、ダスヴィダーニヤ」を映画化し、公開も間近いと
いう。かって、沢部ひとみさんの本を読んだ時、この物語こそ浜野さんの長編三
作目の映画にしてもらいたいと心底願った。この頃、なんであの時あんなにも熱
烈に願ったとのかと沢部さんの本を再読した。
 まず第一に、瀬戸内寂聴さんをも手を焼かせた極めつけの怪物、湯浅芳子に立
ち向かっていった沢部ひとみさんに改めて脱帽する。恐らく用意周到な資料収集
とその解読、内面に至る緻密な分析をしつつ臨まれたのであろうと拝察した。し
かし、これだけでは湯浅芳子という対象に肉迫はできないのではないか。素朴で
静かなたたずまいの沢部さん(浜野さんの出版記念パーティでお見かけしました)
の中にはただならぬ情念というか執念や愛着があったのではないだろうか。対し
て、ピンク映画300本を豪語する浜野監督は文芸作品を二本撮った。「尾崎翠を探
して」と「百合祭」。一つはすい星のように現れて消えた一人の女性作家の生き
方と作品について男性的見かたを排除し再評価した。もう一つは女性老人の群像
を描いて秀逸。どちらも女性の視点から全体状況を吟味し、映像は美しく、そし
てなにより女の力が漲っている。映画を作りたいばっかりにギンギンの男社会ま
っただ中のピンクの世界に、女一匹志をさらしに巻いて(私の印象です)飛び込ん
で、行き着いた先がこれらの映画だ。これはもう執念というほかない。
女三人、怪物がそろった。要するに役者が揃ったというわけですね。あとは開幕
を待つだけ・・。楽しみです、とても。
蛇足? これが本論かも? 湯浅芳子は沢部さんの作品を読んで亡くなった。あ
と十年ほど「演死(死の予行演習)」を重ねて、浜野さんの映画を見てからあちら
に行って欲しかった。湯浅芳子ほどの人がなんで93歳かそこらの若さで行っちゃ
ったのよと届かぬ恨みを言いたいです。
みやもと せつこ